弁護士コラム

定期預金も当然分割されなくなるの?

相続人の間の紛争が熾烈な場合、当然分割が利用できるのが気楽ですが、平成28年最高裁大法廷決定以来、この法理が定期預金にも妥当するのか、肯定説と否定説が対立していました。しかし、最高裁平成29年4月6日家庭の法と裁判11号2017年10月66頁で判断が示されました。

 

【問い】共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるか。

【結論】相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。

 

1 本件は,亡Cの共同相続人の1人であるXが,亡Cが信用金庫であるYに対して有していた普通預金債権,定期預金債権及び定期積金債権(本件預金等債権)を相続分に応じて分割取得したと主張して,Yに対し,その法定相続分相当額の支払等を求めた事案であり,亡Cのその他の相続人であるA等がYに補助参加した。
2 原審は,本件預金等債権は当然に相続分に応じて分割されるなどとして,Xの請求を一部認容した。
 これに対し,A等が上告受理の申立てをしたところ,第一小法廷は,原判決中Y敗訴部分のうち預金及び積金に係る請求に関する部分を破棄し,同部分につき1審判決を取り消し,同部分に関するXの請求をいずれも棄却した。
3 共同相続された普通預金債権が相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるものでないことは,最大決平成28年12月19日・民集70巻8号2121頁(平成28年大法廷決定)で明らかにされていた。また,平成28年大法廷決定は,ゆうちょ銀行の定期貯金債権についても同様の結論となることを判示している。したがって、この考え方を推し進めると、ゆうちょ銀行以外の金融機関の定期預金・定期貯金にも及ぶものと考えられていたところである。
 本件で問題とされた定期預金の中には,一部支払が可能である旨の特約が付されたものもあったようであるが,本判決はこの点に言及することなく一般的に定期預金債権が相続開始と同時に当然に分割されない旨を判示している。上記のような特約は定期預金の基本的性質を変更するものではないと考えられる。
 定期積金とは,期限を定めて一定金額の給付を行うことを約して,定期に又は一定の期間内において数回にわたり受け入れる金銭をいう(銀行法2条3項)。そこで,定期積金契約とは,金融機関が,あらかじめ一定の期間を定め,一定の期日に所定の金額の掛金を受け入れ,満期時に掛金総額と給付補填金を合計した一定の金額(給付金)を給付する諾成の有償片務契約である。

 法的性質において預金と区別する理由に乏しいと解されている。そして,定期積金における給付補填金は,預金の元本に相当する掛金総額に加算して給付される金員であることから,経済的には預金の利子と同じ実質を有するものと解されるのであり,相続開始と同時に当然に分割されるかという点について定期積金債権を定期預金債権と区別する理由はないものと考えられる。
4 本件のように,原告が相続により取得したと主張する分割単独債権について給付を求める訴訟を提起する場合,原告の請求は棄却されるべきであると考える。
 

最高裁判示

(1) 共同相続された普通預金債権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである(最高裁平成27年(許)第11号同28年12月19日大法廷決定・民集70巻8号登載予定)。
(2) 定期預金については,預入れ1口ごとに1個の預金契約が成立し,預金者は解約をしない限り払戻しをすることができないのであり,契約上その分割払戻しが制限されているものといえる。そして,定期預金の利率が普通預金のそれよりも高いことは公知の事実であるところ,上記の制限は,一定期間内には払戻しをしないという条件と共に定期預金の利率が高いことの前提となっており,単なる特約ではなく定期預金契約の要素というべきである。他方,仮に定期預金債権が相続により分割されると解したとしても,同債権には上記の制限がある以上,共同相続人は共同して払戻しを求めざるを得ず,単独でこれを行使する余地はないのであるから,そのように解する意義は乏しい(前掲最高裁平成28年12月19日大法廷決定参照)。この理は,積金者が解約をしない限り給付金の支払を受けることができない定期積金についても異ならないと解される。
 したがって,共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。
 5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原判決中上告人敗訴部分のうち預金及び積金に係る請求に関する部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,上記部分に関する被上告人の請求はいずれも理由がないから,同部分につき第1審判決を取り消し,同部分に関する被上告人の請求をいずれも棄却することとする。

2017/10/07